講義レポート

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講義日:2025年6月4日

第7期6月 惠美初彦先生による第3回目講義


大人としての学びを問い直す ― 教育の原点と志の在り方


6月4日(水)に行われた第3回目の講義では、未来に志を立てるために、まず「人としてのあり方」を問い直す、そんな本質的な学びの時間となりました。

今回の講義では、惠美先生より「幼年要目」と「成人要目」という、人生を通じた人間形成の指針について学びました。今後、ATAでそれぞれが「志(立志)」を立てていくにあたって、その土台となる“あり方”を丁寧に見つめ直す時間でした。

幼年要目と成人要目 ― 人としての基本を育む

幼年要目では、「わがままをしてはならない」「弱い者をいじめてはならない」など、一見当たり前に思えるけれども、日常の中で継続して実践するのは決して簡単ではない、人としての基礎が示されていました。

成人要目では、「素直・謙虚・感謝・思いやりを大切にすること」「宇宙や歴史など、現代の知見をできるかぎり学ぶこと」「自分の志に合った企業に就職する」といった、人生の選択や判断における軸が提示されました。

「大人になるとは何か」を正面から定義した書物が存在しない中、先生が図書館に通い、数えきれない本を読み解きながら、一つひとつの言葉を選び抜いてまとめられたことに、教育者としての誠実な姿勢と深い知性を感じました。

躾の五原則 ー 親・子としての学び

講義の中では「躾の五原則」についても学びました。
立腰、読み書き・そろばん、挨拶・感謝、笑顔、履き物を揃えること。どれも小さな行動に見えますが、それを習慣として積み重ねることが、人としての基盤を整える営みであることを改めて実感しました。

「親や経営者になるのに免許がいらない社会である」という視点にハッとした、という声や、「自分の親の躾にあらためて感謝した」といった受講者の気づきも印象的でした。

私自身、子育て中の母親としてこのテーマは深く響きました。自然と子育ての話題も盛り上がり、互いの原体験を共有しながら、改めて「教育とは日々の積み重ね」であることに気づかされました。

長所伸展の教育と、真実を見抜く力

講義の中で特に印象に残ったのは、明治以前の日本の教育が「均一教育」ではなく、「長所伸展」型だったというお話です。寺子屋では、なんと1500種類もの教科書の中から、生徒一人ひとりの進度や特性に合わせて教材が選ばれていたそうで、その柔軟さと個別性に驚かされました。

私自身も中学生の頃、勉強全般は苦手でしたが、英語だけは大好きで夢中になっていました。その「好き」が今の仕事や学びにつながっていることを思うと、長所を伸ばすことが結果的に他の力も育てていくという考え方に、深く共感しました。

AI時代を生きるこれからの私たちだからこそ、あらためて「個性を大切にする姿勢」が重視されるのではないかと感じました。学校の教科書で得られる知識は、今やAIの助けを借りれば誰でも簡単に扱える時代です。だからこそ、「好きなこと」や「関心のあること」を深く掘り下げ、自分の中にしっかりと根づかせていく時間が、これまで以上に大切になってくるのではないでしょうか。

また、現代の情報社会において「真実を見抜く力」がどれほど重要かという話も心に残っています。SNSや二次情報に振り回されるのではなく、一次情報に自らアクセスし、科学的な根拠や出典を確認する習慣を持つこと。その必要性が強く語られました。

ここから、内省の旅のはじまり


次回の講義では、それぞれの人生の選択や進路動機について語る時間があります。まさにここからが、“内省の旅”の始まりです。

「一人が勇気を出して言葉にすると、周囲も自分を見つめ始める」——先生のこの言葉が、深く心に残っています。集団的内省は、共感と気づきを育み、誰一人取り残さない学びの場をつくっていく。その大切さと力強さを、改めて感じました。

ATAのすべての講義が終わるころ、15人の同期がどのような思いで、どんな表情で、どんな未来を見つめて最後の発表をするのか——いまからとても楽しみです。

個性豊かで、人生と真剣に向き合う仲間たちの力が、日本や世界を、より豊かな場所にしていくことを願っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

寄稿日:2025年6月16日
リポーター

川﨑 あゆみ