講義レポート

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講義日:2023年9月6日

第5期9月 第5回特別講師講義レポート〜尾原 蓉子氏〜

自分を愛し、人に優しく生きられる社会の実現に向け「美容的な生き方」やリーダーシップを学ばせていただくアマテラス・アカデミア。第5回目の特別講義には、IFIビジネス・スクール元学長で”ファッションビジネス”という概念を日本に初めて紹介された尾原蓉子さんがお越しくださいました。

尾原さんはファッション業界での人材育成や政策提言に携わられてきたほか、有名企業の取締役を務められるなど、日本のファッション界を切り拓いてこられた革新的リーダー。女性の社会進出が進んでいなかった頃から「女性が世の中の役に立つことができるということを立証する」という大きなミッションを持ち、様々な挑戦をしてこられたといいます。

ご講義では「今こそ、女性リーダー活躍の時」というテーマで、体験を交えて力強いメッセージをいただきました。お話を通して渡していただいた未来へのバトン。そのエッセンスをご紹介させていただきます。

「人間らしく、幸せであろう」

まずお話いただいたのが「人間らしくあろう」ということ。社会に大きく貢献するためには、自分が幸せであることから。生物らしく、自然に、やりたいこと・得意なこと・社会にとって意味があることの3つが重なることを、忖度せずやろう。励まされるとともに自分のままでいることを許可いただいたような、温かいメッセージでした。

新しい価値を生み出す時や、価値を実現・増幅しようとする時にもまた、人間らしくあることは非常に重要。生身の人間として感じることを、AIが探ることはできない。幸せを感じる瞬間を創り届けるためにも、大切なことだと語られました。

これは小林照子先生の提唱される「美容的な生き方」とも共通すると感じます。お二人のように人間的な魅力に溢れ輝いている方、人や社会に大きな価値をもたらす方は、自然体で自分であること、人や世界を愛していらっしゃる。私もそんな生き方をしたいと思いました。

「人と違う自分であることに、自信を持とう」

「出る杭はうたれる」という言葉に代表されるように、日本では人と同じが良いという価値観がメジャーであるように思います。しかし欧米では「You’re diffrent!」は褒め言葉。尾原さんは、ご自身が高校生のときに留学した際のエピソードをお話くださいました。

高校生時代にアメリカに留学された尾原さんは、お母様がもたせてくれた10着のお洋服を順番に着ていたそう。すると、毎日のように周りの人から「You’re so diffrent!」といわれ、悩むことに。ところがある時その様子を見た別の人から「それは褒め言葉だよ」と言われ、初めてそれがポジティブな言葉であることに気づかれたと言います。

人と違うことは、素晴らしいこと。違うことをすれば、同じ土俵で比べられることもありません。これはまた、世界で戦おうとするときに、絶対に覚えておくべきことでもある。そんなメッセージをいただきました。

自分自身を好きでいるためにも、日本人として世界に貢献していくためにも、この考え方を大切に心に留めていきたいと思います。

「女性が能力を生かし、活躍するために」

尾原さんがファッション業界の女性リーダー育成のために設立された​​一般社団法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッショション(*2023年9月現在は解散)の目的として掲げられた3つのポイントを、ご講義の中で私たちアマテラス・アカデミア生へのメッセージとしてお話くださいました。


セルフ・セスティーム(自尊感情、自己肯定感)>

「セルフ・エスティーム」とは、自分自身を価値ある存在だと感じる感覚、自分自身を好きだと感じ、自分を大切に思える感情のこと。人の成長にはこの感覚がとても大切である一方、日本人、特に女性はこの感覚が非常に低いといいます。私自身も、外から見たら憧れてしまうような実績のある方が、「私なんて・・・」と自信がなさそうに話されるのをみて驚いたことがあります。「You’re deifferent」とも重なりますが、私たち日本人は良いところや長所ではなく、周囲と比べて足りないピースを探してしまいがちかもしれません。私もセルフ・エスティームを育てていきたい、またそれがある女性を増やすことに貢献できたら、と思いました。

<人間的で幸せな職業人生を>

そのために必要なことが「専門能力」「リーダーシップ」「経営管理能力」。これを養うことで、自分に自信を持ち、他者をリードし、大きな責任を持って自分の道を切り拓き、社会に貢献していくことができるとお話いただきました。

  • プロと胸を張って言える領域を持つことは、自分自身を飛躍させることにもつながる。
  • リーダシップがあれば、ビジョンを示し、人の心に火をつけ、変革をリードできる。
  • 経営管理能力があれば、大きなお金や人を管理し、ビジネスを動かすことができる。

自由にしなやかに女性として羽ばたき、より良い未来を創っていくために、心に留めて日々生きていきたいことばかりです。

<管理職よりリーダーへ>

変化の激しい不確実性の時代。今求められるのは、組織の管理者よりも、ビジョンや方向性を示し、周囲の心に火をつけ、改革するリーダー。そして優れたリーダーであるためには、現場を知り、自らを磨き、目的に向けて自分の世界や学びを広げ続けることが必要だとお話いただきました。私がアマテラス・アカデミアに参加させていただいたきっかけの一つが「良いリーダーとはなにか?」という問い。この日、その方向をはっきりと示していただいたように思います。

女性が家庭か仕事かを選ばなければいけない時代は終わった。これからは、上記のポイントを大切に、バランスではなくシナジーを求めていく時代。対立概念の二者択一から両立・融合へと発想を転換していく時です。女性としてキャリアを切り拓いてこられた尾原さんからいただいたお言葉だからこそ、一層深く心に刺さりました。

「未来を創る”革新的”リーダーへ」

パワフルでインパクトのあるリーダーとして成功するために必要な姿勢・態度を、たくさんの事例やエピソードを交えてお話いただきました。ここではその一部をご紹介します。

  • 世界に視野を広げよう
    インターネットで検索して知った気になることと、現地を訪れて人と触れ合い、匂いを嗅いだり、空気を感じたりすることは、まったく違うこと。視座を高く、広く、深く、目的に向かって世界をどんどん広げていこう。
  • プロフェッショナルなリーダーであろう
    本当のプロは、仕事にパッション、誇り、そしてプライドを持ち、自分の力量を測ることができる。そして絶えず研鑽を続ける人である。
  • コミュニケーション力を磨こう
    優れたコミュニケーション力とは、ビジョンと実行力があり、自分の考えを伝えることができ、人を鼓舞して動かせること、そして勇気があること。

このほかにも、価値基準を持ちはっきりと意見を示すことに基づく「フェアネス」を兼ね備えた人間力があること、人を育てることの重要性、テクノロジーの本質を理解し使いこなすことなど、たくさんのポイントをシェアいただきました。

言葉として知ってはいても、ここまで深く理解できることは稀です。優れたリーダーの実体験と思索に裏打ちされたお話だったからこそだと感じています。

おわりに:「未来はすでにここにある。ただ、すべての人に均等に配分されていないだけだ」

Twitter 共同創業者ジャック・ドーシーの座右の銘としても知られる、作家 ウイリアム・ギブソンの言葉です。お話の最後にメッセージとしてこの言葉を贈ってくださいました。

今回、女性が当たり前のようにキャリアや仕事について語り、働き方を選ぶことができる「今」は、志ある先駆者の未来へのビジョンから始まったということを実感しました。「私たち一人一人が、未来の片鱗を見つけ、理想の未来を描き、それを創り出すことができる」というメッセージとともに、バトンを手渡していただいたように感じています。

予測よりも、創りたい未来を想像してみるところから。希望のバトンをつないでいけるよう、自分をさらに磨いていこうと思いました。

幼少時からファッション分野に憧れていたこともあり、業界を創ってこられた尾原さんに直接メッセージをいただけたことは、奇跡のように幸せなことでした。尾原先生、そして機会を作ってくださった小林照子先生、本当にありがとうございました。

寄稿日:2023年9月28日
リポーター

八角四季